業務改善は、社員に歓迎されること
本記事では、業務改善のアイデア【PDCAを回す3つのテーマ】として、業務改善を進めるために社員の業務実態や意識を把握する方法を紹介しています。
業務改善は、100社あれば100通りの方法があるといわれます。社内風土や企業理念は会社によって異なりますし、そもそも働いている人の個性にもどれひとつとして同じものはないからです。
しかし、現場の実情や社員の考え方を正確に把握することは、そう簡単ではありません。
「業務改善を進めているが、社内からの反応が薄い」と感じている企業関係者の方は、ぜひ参考にしてください。
モバイル機器などで業務実態を正確に把握
クラウド管理で業務実態を正確かつ簡単に把握
現在はさまざまなベンダーから、ビジネス系支援システムや勤怠管理システムが提供されています。クラウドやオンライン上で管理するシステムなら、時間や場所に関わらず、出退勤の時間など、業務実態を把握できます。
タイムカード代わりになる出退勤管理ツールには無料で利用できるものもあります。ただ、無料も場合は、使用できる人数や機能、データの容量・保存期間などに制限が課せられることがほとんどです。特に勤怠データは働き方改革のPDCAを回す際に役立つので、有料タイプのシステムを導入することがおすすめです。
SFA(営業支援システム)には、社員の現在地や業務フェーズのどの段階にいるかなどの情報もリアルタイムで取得できるものがあります。個人の裁量による営業活動に課題を感じている場合は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
導入時は社員に目的を説明し、理解を求めよう
クラウドやオンライン上で勤怠管理を行うことに、一部の社員が反発するかもしれません。また、トップダウンで導入したとしても、「判で押したようなデータばかりが上がってくる」という事態になるかもしれません。というのも、例えば、長らく自己申告による勤怠管理を許されていた社員などが、「自分を信用してくれないのか」と不満を抱くケースがあるからです。
そのような社員は、そもそも導入の目的を勘違いしている可能性があります。社員の行動監視ではなく、働き方改革を進めるためであるとの目的をしっかりと説明し、理解を求めましょう。
- クラウド系の勤怠管理システムなら外回り中心の社員の実態把握も簡単
- その後のデータ活用も考慮すると、システムは機能が豊富な有料タイプがおすすめ
- 導入時は社員に対し「行動監視が目的ではない」ことへの理解を求める
働き方の実態把握にアンケートやヒアリングを実施する
個人的な考えや思いの把握に最適なアンケート
アナログな手法ですが、アンケートやヒアリングも実態把握には効果的です。特に、出退勤の時間や休暇の取得数など、数字だけでは表すことのできない「個人的な考えや思い」を把握できるという面では、デジタルよりアナログに分があります。
自身の労働時間や帰りやすさ、休暇の取り方、取りやすさなどについての項目を設けてアンケートまたはヒアリングを行います。定期的に社員意識調査を実施している企業であれば、そこにこれらの項目を追加してもよいでしょう。
社員が希望する働き方も調査してみよう
自身の労働時間や帰りやすさを調査して満足の行く結果が出れば、もう一歩踏み込んで、「社員がどのような働き方を希望しているのか」も調査しましょう。例えば、ファストトラック(出世を望むコース)、スタンダードトラック(マイペースを望むコース)、いずれのコースを希望しているのかを把握するだけでも、その後の人材配置が行いやすくなります。
キャリアパスに関する調査は、特に若い社員に対して有効です。その理由は、人事制度にあります。一般的な人事制度は「皆が出世したいと考える」という、従来の価値観を前提につくられています。多様な価値観を持つ現在の若者には、その人事制度にマッチしない人材がいるケースも多いのです。
キャリアパスに関する調査は、特に若い社員に対して有効です。その理由は、人事制度にあります。一般的な人事制度は「皆が出世したいと考える」という、従来の価値観を前提につくられています。多様な価値観を持つ現在の若者には、その人事制度にマッチしない人材がいるケースも多いのです。
●アンケートなどアナログな手法は、個人的な考えや意識の調査に秀でている
●社員それぞれに「希望する働き方」「キャリアパス」を調査するのもあり
社内に相談窓口または担当者を設置する
悩みや不安は働き方を改善するための貴重なヒント
ITの導入やアンケート調査でも得にくい情報があります。それは「悩みや不満」です。ネガティブなタイプの情報は、「周囲には知られたくない」という思いから、なかなかアンケートでも回答しにくいのです。
ただ、悩みや不満が溜まっていく一方ではその社員や組織全体の健康も損なわれます。何より、悩みや不満は環境や働き方を改善するための貴重なヒントにもなります。そこで有効なのが、相談窓口や担当者の設置です。
担当者は産業医や社会保険労務士など専門家がおすすめ
相談窓口や担当者を社内に設置することで、アンケートでは拾えない現状や将来への不満・不安を把握し、職場環境の改善につなげることができます。
窓口や担当者の任命先は、人事労務部門または社外の専門家がよいでしょう。産業医や社会保険労務士といった専門家は、悩みに対する直接的なアドバイスも行えるので一石二鳥です。プライバシー情報の秘匿という側面での安心感も得られます。
- 悩みや不満などネガティブな意見はアンケートでも回答を得られにくい
- 悩みや不満は職場環境や働き方を改善するための貴重なヒントになる
- 社内に相談窓口や担当者を設置し、社員の不満や不安を聞き取る
- 産業医、社会保険労務士など専門家を窓口の責任者や担当者に設置すれば、悩みに対するフォローも行える
好事例は社内で共有し、課題はPDCAで取り組む
業務実態を正確に把握するために収集したデータは、業務の改善に活用します。例えば、業績を維持または向上させつつ、ワーク・ライフ・バランスの取組を進めている組織、年次有給休暇が取れている組織があれば、取り組みが上手くいっている要因を分析。好事例としてまとめて社内に共有し、水平展開をうながします。
反対に、集計した時間数について所定外労働が多い社員、このペースで所定外労働が続いた場合に月間45時間を超えそうな社員がいた場合は、本人や上司にアラートを出し、適切な労働時間の管理を促します。同時に課題の発生原因や対策を考え、改善へとつなげます。
取り組みに関しては「一度やったけれどダメだった」と早急に結論づけるのではなく、PDCAサイクルによって課題解決に取り組むことが大切です。PDCAを回すことで本質的な問題に切り込むことが可能になるからです。
以下は単純化した問題の模式ですが、それぞれの課題には、別の理由があります。
売上が上がらない→社員のモチベーションが低い→休めない→社員数が少ない→求人しても人が来ない→求人方法に変化がない
課題にひもづくことをツリー式で整理して、それぞれの課題をタスクとすれば、自然と認識している課題解決に近づけます。
- 労務実態のデータは業務の改善に活用する
- 好事例は社内で共有して、他部署への水平展開を促進する
- 課題は原因の分析、対策の考案を行い、改善へとつなげる
おわりに
以前、ビジネス系支援システムのベンダー企業の方から、営業支援ツール(SFA)の導入には現場、特に外回り中心の営業職からの反発がひとつのネックだと聞いたことがあります。
見えない鎖を繋がれるようで面白くないと思う現場の気持ちはとても理解できます。ただし、そのようなITツールの導入で働き方が改善されると、反発していた営業職も考え方を180度変えてくれるそうです。業務実態を正確に把握し、適切な改善を行っていくことは、社員の意識も大きく変えてくれるのかもしれません。
■組織マネジメントの関連記事
マネジメント業務を改善する方法
縦割りの業務や組織を変える5つのメリット
企業の魅力を高める業務改善のアイデア12選
仕事のムダと重複をなくして業務改善を進める