はじめに
フォニックスとは、英語の文字(つづり)と発音を結びつけるルール。英語圏でも、子どもに読み方を教える方法として、広く浸透しています。
「ひらがな」や「カタカナ」はどのように文字を組み合わせても読み方はひとつです。でも、「アルファベット」の文字にはアルファベット読みと音読みという複数の発音があります。
字の組み合わせによっても読み方が変わります。このルールを身につければ、初見(始めて見る)の英単語でも正しく発音できるだけじゃなく、聞いた英単語をスペリングできるようになります。
それに、幼児期から英語耳になっておけば、英語の4技能(読む、聞く、話す、書く)をアップさせるのにとても効果的だと思いませんか? 実は、フォニックスは、英語に苦手意識のある大人にも有効な学習方法。お子さんと一緒に、パパやママもフォニックスの学習を始めてみませんか。
英語指導歴20年の経歴を持つ筆者が、教室で長年使っているおすすめの教材を以下でご紹介しています。ぜひ英語学習の参考にしてください。
英語学習にフォニックスを取り入れるメリット
小学校の授業にも英語が導入されているにもかかわらず、英語に苦手意識を持つ日本人が多いのは、文字と音のルール、いわゆるフォニックスをきちんと理解できていないことにも原因があるといわれています。近年は「話す」技能にも注目が集まっていますが、まだまだ「読む」「書く」「聞く」の3技能を重要視してきた背景が影響しているのだと考えられます。
英語の4技能をバランスよく身につけられる
そんな英語学習の環境下で効果的なのが、フォニックスという勉強法です。英単語の読み方のほとんどは、フォニックスに沿っているため、そのパターンをたくさん知っていれば、一部の例外を除き、英単語を一見しただけで正しく発音できるのです。
また、英語4技能を同時に伸ばすことができるともいわれていて、英単語を正確に発音できるほか、聞いた単語を正しくスペリングできる、初見の英文もスラスラ読めるといったメリットが考えられます。
発音で間違えやすい一例をあげると、「l」と「r」、「c」と「k」。日本人には同じ音に聞こえがちですが、英語では異なる音と捉えられていて、例えば「lock(鍵)」を「rock(岩)」という風に読み違えてしまうと、まったく別の単語になってしまいます。
だからこそ、文字(つづり)と発音のルールを習得することをおすすめしたいのです。英語に苦手意識を持つ前に、読める、話せるといった成功体験を積む。これこそが、英語好きの子どもを育てる秘訣です。
幼児期からフォニックスを学ぶのが効果的
小学校3年生になると、授業でローマ字を習います。フォニックスを知らないままローマ字を習得すると、どうしてもローマ字読みにひっぱられてしまい、英単語を書く際に混乱してしまう子も少なくありません。実際に、私たちの英語教室でもローマ字を習ってからフォニックスを始めた子は、定着するまで時間がかかる傾向にあります。
ローマ字学習が始まる前にフォニックスをおすすめ
ですから、私たちスタッフは、遅くともローマ字学習が始まるまでにフォニックスを身につけてほしいと考えています。これまでの経験から、英語やローマ字になんの知識も持たない年代からフォニックスを始めることが重要で、よりスムーズにルールを定着させられるとわかっているからです。私たちの教室では、年中児クラスからフォニックスを取り入れて、10年以上実践してきました。
フォニックスの習得に、耳の良い幼児期を逃すのはもったいない! 少しでも早く、フォニックス学習をスタートさせましょう。
私たちの教室で使っているテキストをご紹介
レッスンで実際に使用している教材は、韓国の大手出版社e-future社の「Smart Phonics」シリーズ。英語を外国語として学ぶ小学生のために作られたテキストです。1から5までのテキストすべてにCDが付いているので、自宅でも手軽に英語に触れることができます。
お家で何度も付属のCDを聞いて、レッスン中にアクティビティをしながらフォニックスルールを定着させる。この方法なら、幼児でも楽しんで習得できます。
CDを聞くことを勉強と捉えず、流れているのが当たり前の環境にするのが一番。例えば、車での移動中に聞くとか、朝食時のBGMにするとか、生活の一部に組み込んで習慣化するのが良いでしょう。
では、実際どのように使えばいいのでしょうか。レベル別にテキストの特徴を交えながら、以下で説明していきましょう。
e-future社「Smart Phonics」(レベル別)
どのレベルにも共通して重要なのは、何度も繰り返しCDを聞くこと。耳を鍛えずして、フォニックスを定着させることは不可能です。
Smart Phonics 1
Smart Phonicsのレベル1のテキストは、アルファベットの読み方から始まります。どのページも可愛い挿絵入り。塗り絵や簡単なゲームなど、子どもたちの心を惹きつける要素もたくさん入っているので、飽きずに楽しく勉強できます。
テキストの内容に沿ったワークブックもありますが、私たちの教室で購入してもらうのは、テキストのみ。
各ユニットの最後にライティング用のページがあるので、この1冊で書く練習までフォローできます。また、各ユニットの終盤には、簡単なStoryが掲載されているので、CDを聞いているうちに自然と暗唱できるようになる子も多いです。
Smart Phonics1のゴールは、1音素(1文字)を正確に聞き取って、正しく発音できるようになること。3文字以上の単語の読みに備えます。私たちの教室では、年中児クラスから使っています。
Smart Phonics 2
Smart Phonics 2のテキストは、主に年長児クラスで使っています。
1音素(1文字)の聞き取りや発音は十分に学習できているので、ここからは3音素(3文字)を組み合わせ、いろいろな単語を読めるようにしていきます。
Smart Phonics 2に出てくるのは、Short Vowel(短母音)。Short Vowelというのは「a」は「ア」、「u」は「ウ」など、音を伸ばしたり、重ねたりしないで短く読む母音のことです。
先頭の文字のみ違う複数の単語を同時に学ぶので、フォニックスのルールが理解しやすくなっています。1と同じように塗り絵やゲームなどのアクティビティもありますが、ライティングは少々難易度があがります。文字から単語になるのが大きな違いです。私たちの教室では、Smart Phonics 2から、読むことを本格的にスタートさせています
Smart Phonics 3
Smart Phonics 3では、4音素(4文字)の英単語、Long Vowel(長母音)を中心に学習します。Long VowelとShort Vowelの大きな違いは、例えば「a」を「エイ」、「i」を「アイ」というように1文字を2音で発音することです。
「oo」や「ay」「ea」など、ふたつの母音を組み合わせた発音も、Long Vowelです。また、語尾に「e」をつけることで、音読みからアルファベット読みに変化するという「マジックe」のルールも出てきます。語尾につけた「e」を発音しないため「サイレントe」と呼ぶこともあります。
定着するまでに時間がかかり、読み方を間違えてしまう子もいるのも事実ですが「これはマジックeだよ」と声をかけると、正しく読めるようになるから不思議。まさにマジックですね。
私たちの教室では、小学1年生のクラスでSmart Phonics 3を使います。アルファベットを習う前に、少なくともこのレベルまで定着させておきたいと考えています。
Smart Phonics 4
Smart Phonics 4では、ふたつの文字をつなげた音のルールを学習します。例えば、日本の教科書にも必ず載っている「th」や「wh」ですね。
what, where, when、this, these, thereなど、日本人に馴染み深い文字の組み合わせですね。日本語にない英語独特の発音で、舌や唇の使い方が大切だということは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
フォニックスのルールをしっかり学ぶと、どの2文字の組み合わせの発音も、決して難しくはありません。Smart Phonics 4を使っている2年生にもなると、「wh」「th」、「sh」「ch」など2文字で始まる単語を探すのが大好きになり、もはやゲームと化しています。スペルの間違いもほとんどありません。
ただ、このテキストで注意したいのは、「cl」「cr」、「bl」「br」など、「l」と「r」の発音です。この音の違いを聞き取れないと、ディクテーションをしても、間違えてしまいがち。微妙な音の変化を聞き取るには、特に集中して、静かに耳を傾けることが重要です。
Smart Phonics 5
全5レベルの5冊目。このシリーズはSmart Phonics 5で完結します。単語の文字数はバラバラ、8文字程度の単語も載っていて、かなり書く部分が増えているという印象です。
ただ、今までのテキストと同様、イラストや挿絵が多く、コミックのように読み進められるストーリーやゲームもあるので、内容は難しいながらも、あまり勉強をしているという感覚にはなりません。
それほど長い文章は掲載されていませんが、1〜5のテキストで習ってきたフォニックスルールをマスターしている子は、一部の例外を除き、初見の英文でもスラスラと読めるようになっているはずです。
実際にSmart Phonics 5を使っている3年生クラスでは、初見でビートルズやカーペンターズなどの歌詞を読める子がほとんどです。リーディングと同時に、ライティング力も備わっているので、ディクテーションでもかなり正解率が高くなっています。
e-future Smart Phonicsシリーズを使っている理由
私はよく「英語を習っていてよかったと思う瞬間は?」と、子どもたちに質問します。答えのなかで1番多いのは「外国人としゃべって相手の言ってることがわかった時」、「自分の話す英語が相手に伝わった時」。たぶんこれは、大人も同じではないでしょうか。英語が通じたという喜びが、成功体験となり、英語への学習意欲につながります。
数あるテキストの中からSmart Phonicsシリーズを選んだのは、フォニックスを徹底的に身につけて、英語ができるという自信を持ってほしいと考えたからです。時間はかかりますが、圧倒的な単語数を誇るこのテキストでフォニックスを体系的に学んでいくことで、確かな力がつくと確信しています。
英文を読める、英単語を正確に書けるという自信は、子どもたちの学習意欲を高めます。フォニックスのテキストが終了した次の段階に進んでも、積極的に勉強する姿勢が見られます。その結果、私たちの教室では、小学校を卒業するまでに英語実用検定の3級に挑戦。7割以上の子が合格という成績を残しています。
これまでの「読む」「書く」中心の英語にプラスして、フォニックス学習で「話す」「聞く」技能をアップさせましょう。
まとめ
フォニックス学習のメリットは大きく3つ。
- 英単語を正しく発音できるようになる
- 聞いた単語を正確にスペリングできるようになる
- 初見でも、英単語や英文を読めるようになる
まずは楽しく!段階的にフォニックスを定着させる
おすすめの教材は、外国語として英語を学ぶ小学生に向けて作られた「Smart Phonics」シリーズ
- 5つのレベルを段階的に習うと、フォニックスのルールすべてがわかる
- 付属のCDを聞くことを習慣化して、日常生活に組み入れる
- フォニックスは、英語の4技能を同時にアップするのに有効な勉強法
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