はじめに 〜会話が苦手だと悩んでいる人への応援も込めて〜
本記事では、会話をムリなく続ける方法を4つ紹介しています。
おそらくページを開いたということは、あなたは会話を苦手としているのでしょう。自分ほど話下手な人はいないと悲しんだり、お笑い芸人など場を明るく盛り上げられる人を羨んでいるのかもしれません。
世の中には、書籍でもネットでも、「上手な会話のノウハウ」のような情報が溢れています。そしてその多くが、納得できる内容のものだと思います。しかし同時に、何の役にも立たないとも感じていませんか? 「こういうノウハウがあるんだよ」と言われて「なるほど」と思っても、なかなか実践できないものです。
ただ、だからといって諦めないでください。先に結論を言えば、会話下手な人なんていないんです。そこで今回は、会話が苦手だと悩んでいる人への応援も込めて、会話スキルを紹介したいと思います。
会話を続けるために聞き役に徹する
会話を続けるのに苦手意識があるなら、いっそのこと聞き役に徹するのもいいでしょう。皆が会話している中、にこにこ笑って聞いていればいいのです。
と言うと、なんだか冷たく感じられますね。でも、特に複数人で会話する際は、聞き役というのは大事なポジションなんですよ。皆が「俺も、私も」となれば収拾がつきませんから、緩衝材となる存在はとてもありがたいんです。
要するに、会話というのは何も絶対に話をしないといけないわけではない、ということです。
話しやすくするための合いの手を考えたり、表情で答えたりすればいいのです。
もっとも、「ずっと黙っているわけにはいかないでしょ」と思う人もいるでしょう。そんな方には会話の鉄板ネタ②と③がおすすめです。
● 会話は「話すことがすべて」ではない
● 聞き役に徹して、相手を話しやすくさせるのも立派な会話術
● 特に複数人での会話は、聞き役は重要なポジション
会話を続けるためにネタを2、3個つくり練習しておく
「人志松本のすべらない話」というお笑い番組をご存知ですよね。芸人やタレントの方々が一人ひとり小話をする番組です。話をされる芸人さんは皆、流暢に話されます。観ているこちらも「さすが芸人さん、話がうまいなぁ」と感心させられます。
でも、芸人の皆さんは、番組で話すネタを何度も練習してから収録に臨んでいます。放送では、あたかも今思いついたことのように話されていますが、事前に話の内容を練り直し、完成度を高めてから臨んでいるんです。
プロの芸人さんですら練習しているのに、素人の私たちがいきなり面白く話ができるはずがないですよね。
ネタは2つか3つで構いません。面白いことでなくても大丈夫です。日常の中で起きた、ちょっとしたできごとでいいんです。ただ、「あーっと、えーっと」と詰まりながらだと、聞いている側も耳に入ってきません。だから最後までスムーズに話せるように練習しましょう。
● プロのお笑い芸人さんも、面白い話をするときは練習している
● 素人の私たちなら余計に、いきなり面白い話ができるはずがない
会話を続けるには「あれ?」と思ったことは質問する
「これができれば苦労しないよ」と思う人も多いでしょう。そんな方にあえて聞きます。「なぜこれができないのでしょうか?」。
頓珍漢な質問をして場を白けさせたくないから? 話の腰を折りそうで不安だから? 質問に答えてもらえないのが怖いから?
あまりに気分良さそうに話す人がいると、つい及び腰になってしまうのも理解できます。でも、そうやって気分良くしゃべっている人は、実は質問されると嬉しいものなんです。「あ、この人、ちゃんと話を聞いてくれてる」と思うんですよ。それが仮に頓珍漢な質問だったとしても、「いやいやそうじゃなくてね、つまりこういうことで……」と、結果的に新たな話題を提供したことにもなります。質問に答えてもらえなかったとしたら、それはその人が触れてほしくない部分だということ。無理に突っ込む必要はないですし、「ここがタブーなんだな」と収穫を得た気でいればいいんです。繰り返しますが、機械的に「そうなんですね」「すごいですね」と相槌を打つよりは何百倍もマシです。
● 気分よくしゃべっている相手を恐れる必要はない
● 質問されると、むしろ喜んでさらに話を広げてくれる
会話が続くテーマを押さえておく
「ネタもない」「質問するのも怖い」という方のために、人が楽しいと感じる世の中のジャンルを10個紹介します。これは任天堂でプランナーとして活躍された玉樹真一郎氏が、著作『「ついやってしまう」体験のつくり方:人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』(ダイヤモンド社)にて、ゲームを面白くする要素として提唱していたものです。人が盛り上がる話題にも通じると感じたので、個人的な解釈のもと一部改変し、以下で紹介させていただきます。
- 性のモチーフ・・・恋愛、健康など
- 食のモチーフ・・・美味しい、不味いなど
- 損得のモチーフ・・・お金、競争(出世)など
- 承認のモチーフ・・・友情、流行、あるある話など
- けがれのモチーフ・・・犯罪、下ネタなど
- 暴力のモチーフ・・・差別、戦争など
- 混乱のモチーフ・・・世の中の矛盾、災害など
- 死のモチーフ・・・怪我、病気、怪談など
- 射幸心のモチーフ・・・賭け事、偶然のできごとなど
- 身辺情報のモチーフ・・・自分の過去、性格など
共感があれば、退屈な会話なんて存在しない
思考実験「中国語の部屋」について
「ぶっちゃけ」という砕けた言葉をあえて使うほど声を大にして言いたいのが、「退屈な会話なんて存在しない」ということです。
ジョン・サールという哲学者が行った有名な思考実験に、「中国語の部屋」があります。アルファベットしか理解できない人が小部屋に入り、そこに中国語の文が書かれたカードを差し入れます。また、小部屋には「この記号(漢字)がこう並んでいる場合は、この記号(漢字)をこのように並べて返す」と記されたマニュアルが用意されています。小部屋の人はマニュアルに則り、文の意味がわからないままカードを返します。
さて、この実験では中国語による文章のやりとり(会話)が行われました。しかし、もしあなたがカードを差し入れた中国人だとしたら、小部屋の中にいた人とコミュニケーションが取れたと感じるでしょうか?
会話は成り立っています。でも、コミュニケーションは取れないと感じます。その理由は、このやりとりに「心」=「共感」が存在していないからです。
「すごいね!」と言われて嬉しいですか?という話です
例えば、会話のノウハウとして、「相手を喜ばせる言葉を言いましょう」があります。「すごいね!」「なるほど」などを言えば会話が盛り上がりますよ、というのです。
でも考えてみてください。「中国語の部屋」のように、マニュアル的に「すごいね!」と言われても、本当に嬉しいでしょうか? 「あ、この人は私の話を聞いていないな」と感じて、それこそ退屈になってしまいますよね。
共感のない会話は退屈だということは、反対に心さえあれば退屈ではないということです。
自分がそのとき感じたこと、頭に思いついたこと、こうじゃないかと考えたこと。そういうものを恐れずにバンバン口に出したらいいんです。自分の中から生まれてきたのだから、それは血の通った言葉です。マニュアル的に交わす言葉よりも間違いなく有意義です。繰り返しになりますが、本当に恐れずに発言していいんです。もしそれで「つまらないな」と思われたら、最初からあなたとその人の性格があってないと考えるべきでしょう(会話に関してはこれぐらい自己中心的な方がいいんですよ)。
とはいえ、「こんな話をして、すべったらどうしよう」とか、「会話の流れを切らないかな」などと、不安になることもありますよね。そんな方のために、対応策を幾つか紹介しましょう。
● 会話に共感が存在しなければ、コミュニケーションは成り立たない
● マニュアル通りの会話ができても、そこに共感がないから退屈になる
● 血の通った言葉は、マニュアル通りの言葉より間違いなく価値がある
● つまり、心さえあれば退屈な会話はなくなる
本記事のまとめ
会話はコミュニケーションの手段です。しかし、会話が苦手だと言う人は、上手に会話することばかりに意識が向いていると感じます。そうではなく、「この人のことを知りたい」、「この人に自分の考えはどう映っているのか」など、相手に興味を持つことが大切です。興味を持つことで、心のある言葉が生まれます。その言葉で紡がれた会話が、退屈なはずありません。