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【昭和な食卓】がんもどきのあるうれしさ

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大根の苦味旨味はおいといて

今夜の食卓:大根とがんもどきの煮付け、おくらと削り節のあえもの、塩漬けきゅうり、玄米+ごはん、薄揚げ味噌汁

その昔、かなり昔、47年くらい前の話になる。当時、夕飯のおかずとして登場する大根の煮物は、大根だけであることがほとんどだったため、食欲のモチベーションは上がりようがなかった。マルシンハンバーグが、キンブオブ子供のおかず時代である。真っ赤なウインナーが、主役になった時代でもある。

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茶色の食卓は昭和の象徴

昭和がさんさんと輝き始めたとき、ウチの家では、ばあちゃんがご飯をつくっていた。煮物中心で、茶色い食卓であった。色とりどりの食卓とは違う。

食卓の真ん中に、大皿、大鉢がどんと置かれ、それをみんなでつつくのだ。それが、醤油ベースの煮炊きであったから茶色の食卓なのである。味は悪くない、むしろおいしいと感じる料理であった。

しかし、テレビCMでハンバーグやウインナーなど、欧米的、先進的、魅惑的な食品が連日放映される中では、大皿、大鉢といえども主張しきれないのである。しかも、当時は、食事中にテレビをつけるのは自然なことであったから、CMに出てくる、美味しいに違いない食べのものをまざまざと見せつけられ、茶色い食卓と見比べることになる。

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ハンバーグが自慢のおかず

晩のおかずにハンバーグを食べた、ということが、翌日の自慢話しになる昭和の小学生にとっては、まさに食事中のテレビのCMは、夕食のおかず選手権において敗北を痛感させる一撃となった。「和男くんちの夕食がこのCMのミートボールだったら、絶対、明日自慢するだろうなぁ」と余計なことをつい想像する。

それがあるとき、食卓の中央に据えられた大鉢の中に、大根の煮物とともに、見たことのない得体の知れない何かが入っていた。輪切りの大根より大きいが、薄揚げとも、厚揚げとも違う丸い何ものか……。父親が「がんもどきやなぁ」と言ったとき、心が「うっひょーぉ!」と叫んだ。なぜか? 以前テレビ番組で、肉が食べられない修行僧が鴨の肉に似させてつくったのが、がんもどきであると解説していたからだ。

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がんもどきの語感がごちそう

鴨肉を食べたことがなかった私にとって「がんもどき」の響は、まさに万願成就に等しいご降臨でもあったのだ。さっそく箸を伸ばし、儀式のごとくご飯の上に一度おき、そこから一気に口にした。「ん?」「これが鴨肉?」「厚揚げ?」と厚揚げチックな食感に、これは鴨肉なんだと厚揚げを否定しようとするも、否定しきれない自分がいた。

「いやいや、これは、がんもどきで、鴨肉にそっくりなはず。しかし、厚揚げみたいな気もするが…」と懸命に鴨肉、鴨肉、鴨肉、鴨肉、鴨肉、鴨肉と暗示をかけるがごとく頭の中でリフレインしたのだが、その食感は、想像に寄り添うものとはほど遠い。

人参、キクラゲなど入っているものの、しょせん雑兵。食事の感想として「おいしい」以外を口にするのは憚られるので、何くわぬ顔のまま食べきり、次に大根を口にした。

夏大根は大人な味。そう感じたのは随分あとのことだけど、がんもどきとの相性はそこそこいいのではなないかと思った次第である。

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