塩対応とは
塩対応とは、冷たい対応であったり素っ気ない応対のことで、総じて人への対応が冷たいことを指す。Yahoo!知恵袋で検索すると2010年6月には次の質問がある(出典を一部改変)。
「○○○の握手会イベントのレポで、「○○は塩」とあるのですが、その意味を教えてください」
2010年ごろはまだ塩対応という言葉は使われていなかったと推定できる。塩対応が世に広まったのは、2014年の「ユーキャン新語・流行語大賞」(生涯学習のユーキャン )であることは間違いない。
その年の新語・流行語としてのひとつとしてノミネートされたからだ。『現代用語の基礎知識』では2014年11月に発売された「2015年版」から「塩対応」の説明が掲載されている。
本来、塩はしょっぱいもので、冷淡や素っ気ないと直接的には関係がない。では、なぜ「しょっぱい」が、冷淡、素っ気ないに変化したのか。
塩対応は、大相撲が語源?
語源のひとつとして考えられるのは大相撲だ。大相撲では、土俵に塩がまかれる。負ける力士は塩がつくことから、弱い力士に対して「しょっぱい」が隠語として使われるようになった(出典:wiki)。
その後、大相撲界からレスラーに転向したレスラーが別の意味で使い始めた。客が満足しないレスリングを「しょっぱい」というようになったのだ。
面白くない、つまらないの意味として「しょっぱい」という隠語が徐々に広がってゆき、それが、隠語としての塩になり、塩対応へと変化した。
塩→しょっぱい→塩→塩対応への隠語の逆戻り
これは、実は興味深い言葉の変化である。もともと弱いことの隠語として「しょっぱい」が使われ、その意味が転じて「つまらない、面白くない」になり、その後「しょっぱい」の隠語として「塩」が使われるようになったことを意味する。
つまり、塩対応とは、もともとの語源がである「塩」が表に出たのだが、その立ち位置はあくまでも隠語として使われるという不思議な言葉でもあるのだ。
あいつは「塩対応」だなといえば、今では素っ気ない、冷淡の意味で通る。隠語には違いない。あいつは「塩」の単体使いもしかりである。
もともと大相撲界の「弱い」の隠語で始まった「しょっぱい」は、その後、世間の風聞を受けて「塩」に戻ったのだが、あくまでも「隠語」としての復活だから、そこに奇妙なおかしみがある。
塩本来の意味も含まれる可能性がある
大相撲、プロレス、流行語大賞の流れから塩対応が発生したと考えられる。しかし、もともと「しょっぱい」は味以外の使い方もされている。
ケチな人を「しょっぱい人」、困惑や嫌悪した時の表情である「しょっぱい顔」、かすれている声を「しょっぱい声」、出来の悪い製品を「しょっぱい品」などである。
しょっぱい品以外は、塩や塩味が強い食品を食べた時の様子でもある。衝撃というか瞬間的なイメージである。確かに塩だけを舐めるとインパクトがある。
普通のスープだと思って食して、それが「しょっぱすぎる」と「うっ」と感じる。塩が濃いことがわからなければ「意外」「想定外」「思惑外」を感じる。
アイドルに関してはどうだろうか。舞台やモニター越しで、笑顔を振りまいてくれるアイドルはとても近しい存在だ。
握手会には、そうしたアイドル像を思い描いてゆくだろう。しかし、対面したアイドルが想定外の冷たい対応だったならば。
意外な印象を受けることだろう。つまり、塩対応には、語源のひとつとされる「つまらない」だけでなく「塩」を知らずに食した時の印象も付加されているといえる。
たんに、冷淡、素っ気ないだけでなく、そこに「意外」「思い描いたのと違う」という意味も内包されていると考えるが自然である。