大学生活におけるゼミの選び方とは
後悔しないゼミの選び方として、スキルアップの観点からゼミを選ぶ方法をご説明します。
ゼミこそが、大学での学びのほとんどを占めるといっても過言ではありません。その証拠に、就職活動のエントリーシートや面接でも、ゼミや研究についての質問が頻出します。
ゼミの目的とは知識の専門性を高めることです。また、講義は教授から受動的に学ぶのに対し、ゼミでは学生自身がテーマを決めて研究するなど、主体的な学びが要求されます。ゼミの選び方における最優先事項は、自分が関心を寄せる分野を学ぶことです。
しかし、複数のゼミで迷ったり、どの分野も興味がなかったりと、頭を悩ませる学生は少なくありません。そんな場合は本記事を参考にして、スキルアップという視点からゼミを考えてみてください。
興味と就職など、将来像をすりあわせる
大学生活を通して、誰もが一度は就職を意識したことがあるはず。先を見据えたゼミ選びは、必ずや就活生や社会人としての力につながっていきます。ゼミが開講される時期は大学や学部ごとにさまざまですが、1年次でも3年次でも、将来像に合わせて行動するのが大事であり、これはゼミ以外の活動でも同様です。
2年次後期〜3年次の場合
就職活動を間近に控える学生は、就職対策本やインターネットなどを参考にしながら、自己分析を行うとよいでしょう。少し早いと感じるかもしれませんが、自己分析は就職活動の第一歩。ゼミ選びと就職活動を一度に進められるのも利点になります。自身の価値観や得手不得手を知り、どのような仕事や職種を目指すべきなのかを把握しましょう。
1年次〜2年次前期の場合
年次が低く、就職活動に対する意識が漠然としている場合は、なぜその学部や学科、コースを選択したのか振り返ってみてください。例えば、外国語学部なら「グローバルな仕事がしたい」「いろんな言語を学びたい」などの理由が挙げられると思います。その志望動機につながる仕事を調べたり、連想したりして、自分の将来像を具体的に考えてみましょう。
「グローバルな仕事がしたい」→外交官、客室乗務員、海外営業、バイヤー
「いろんな言語を学びたい」→通訳、グランドスタッフ、ホテルスタッフ、外国語教師
将来像の実現に必要なスキルを逆算する
大学病院の医師を志す場合と、小学校の養護教諭を目指す場合では、同じ医学学習者でも視点が異なるはずです。将来の方向性が明らかになれば、将来像を実現するために必要なスキルを洗い出すことができます。前章で行ったのは、将来像を明確にするという工程です。
磨くべきスキルが明らかにするには、まず、目的地を熟知することが大事です。就活情報サイト(マイナビやリクナビ)で志望する仕事や職種、企業を検索し、以下3点に留意して採用情報を閲覧します。
□ 志望職種は新卒採用を実施しているか
□ 必要な資格や経験、スキルなど
□ 求める人物像(業務内容と照らし合わせる)
これらの情報をもとに、現在の自分に不足している能力を考えます。論理的思考力やリーダーシップなどと抽象的なものから、資格や免許、特定のソフトを扱うスキルと具体的なものまでさまざまだと思います。こうした点をカバーできるゼミを選びましょう。
どのような点に着目してゼミを選べばいいのか、次章で詳しく説明します。
ゼミ活動を通して身につく力を考える
後悔しないゼミの選びかたを考えると、ゼミの学習内容だけにとらわれず、どのようなスキルが身につくのかを広い視野で眺めることが大切です。
学習や研究で得られる知識
学習や研究で得られる知識とは、つまりゼミで学ぶ内容です。
当然ながら、財務会計ゼミなら財務会計の知識が、行政法ゼミなら行政法の知識が身につきます。就職に際して試験が課される公務員や士業、あるいは企業の管理部(法務・経理・人事)を目指すなら、ゼミでの学習が試験対策に直結するゼミを選ぶと良いでしょう。
授業形式によって鍛えられる力
輪読やグループワーク、プレゼンテーション、ディスカッションなど、授業形式もゼミごとに異なります。
たとえ同じ内容を扱っていたとしても、授業形式に応じて必要なスキルは異なります。将来像の実現に必要なスキルを磨くため、授業形式に焦点を当ててゼミを選ぶのも1つの方法です。以下では基本的な授業形式と、それによって身につく力を説明します。
●プレゼンテーション
大学で要求されるプレゼンテーションは、「研究の成果発表」と考えて問題ないでしょう。スライドやレジュメはあくまで補助材料であり、口頭でのわかりやすい説明が肝になります。発表後に質疑応答が行われることも多く、準備が不十分だと乗り切ることができません。輪読やグループワークと同時に行われることも。
一方でビジネスにおけるプレゼンテーションは、単なる発表ではなく、聞き手の心を動かすことが目的となります。しかし、学生時代に場数を踏み、基本的なプレゼンテーションスキルを身につけておけば、実務にも臆せず臨むことができます。特に営業職や企画職、教育関係を視野に入れているのであれば、プレゼンテーションが豊富なゼミへの所属を強くおすすめします。
●ディベート
テーマについて、賛成派と反対派に分かれて討論するのがディベートです。主に社会科学系の学部で採用されています。時事問題に関するテーマが多いため、普段から情報感度を高めておかなければなりません。また、発言や質問の機会が豊富なため、慧眼を養うことができます。とりわけ、マスコミやコンサルタントなど鋭い視点を要する職で、ディベートでの学びを存分に発揮することができるでしょう。
●グループディスカッション(グループワーク)
1. 自由討論型
答えのない問いについて自由に議論します。
(例)「哲学は現代人にどのような学びを与えるか」
2. 課題解決型
意見を交わし、課題解決に資する結論を導きます。
(例)「高齢者でも簡単に使えるキャッシュレス決済のアイデア」
3. 選択肢型
与えられた選択肢の中から、話し合いを経て1つを選びます。
(例)「三英傑で最も次期首相にふさわしい人物」
社会人としての総合的なスキルが問われるのがグループディスカッションです。そのため就職活動の選考に組み込まれることも多く、ゼミでの経験が役立ったという声も多く聞かれます。一般事務や秘書、管理部門など、縁の下の力持ちとなる職種を目指す場合も、グループワークで基本的なビジネススキルを高めるとよいでしょう。
●輪読
指定された文献を分担して読み進めていきます。輪読の目的とは、複数人が力を合わせて該当箇所の理解を深めること。それぞれに担当箇所を割り当て、週替わりで内容を発表します。単にあらすじをまとめるだけでなく、テキストにはない背景や関連事項にも言及し、考察まで展開するのが特徴です。発表後には、他の参加者も交えて意見や疑問点を話し合います。文献を理解するという大きな目的以外は、ディスカッションとの共通点も多いです。
発表者として読解力や要約力はもちろん、異なる物事同士に関連性を見出す力が身につきます。この能力はアイデア創出に不可欠であるため、企画やマーケティング、クリエイティブなどの職業を目指す学生は鍛えておきたいところです。
課外活動で積むことができる経験
課外活動が盛んだと、座学だけでは得られない知識や経験を培うことができます。
知人が所属していた地域社会学ゼミでは、実際に学外に足を運んで調査を行い、地域社会と連携してイベントを開催したこともあるそうです。また、国内外で研修やフィールドワークを行うゼミも。学習の一環として渡航するので、決して旅行のように自由度が高いわけではありませんが、貴重な学びが得られたといいます。
就職活動において、強力な自己PRや学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)の材料になるのも魅力です。
ゼミ選びで考慮する必要のない要素
これまでスキルアップの観点からゼミを選ぶ方法を説明してきました。スキルアップを軸にしてゼミを選ぶとき、考慮しなくてもよいポイントも解説しておきます。
人間関係はゼミで新しくつくる
よく聞かれるのが「ゼミで友人ができるか心配……」という声です。ゼミはグループワークが多く、学生同士でコミュニケーションを図る機会が豊富なので、通常の講義よりもはるかに友人を作りやすい環境だといえます。
また、同じゼミに所属しているということはなんらかの価値観が一致しているということ。確かに1人で飛び込むのは不安ですが、新たな出会いが視野を広げてくれるかもしれませんよ。
規模よりも自分のやる気が大事
学部の規模に応じては、ゼミ生の数にばらつきが生じます。1学年につき約500名を超える学生が在籍する学部などは、多いゼミなら60名以上、少ないゼミはマンツーマンということも珍しくありません。
ゼミ生が増えれば増えるほど、指導が手薄になることを心配する方もいるかもしれませんが、先述したようにゼミは主体的に学ぶ場です。大規模なゼミでも意欲があれば目をかけてもらえ、逆に、小規模なゼミでもやる気がなければ放置されます。特別な理由がなければ、規模にこだわる必要はないといえるでしょう。
コネに縛られることもある
教授と企業につながりがあり、実質上のコネが存在するゼミもあると言われています。しかし、コネ欲しさにゼミを選ぶのは非合理的であり、少なからずリスクを伴います。
まず、そもそもコネがあるという「噂」が真実か確かめるのは困難です。「先輩から聞いたから本当だ」と思うかもしれませんが、ただのOB・OG訪問をコネだと誤認していたり、話を誇張していたりということは少なくありません。全く興味のないゼミに所属し、貴重な学生生活を無為に過ごしてしまうと、実際に就職活動をするときに困るのは本人です。
また、実際にコネのおかげで運良く就職できたとしても、教授の顔がある手前、なかなか退職に踏み切れないという話も聞きます。こうしたリスクを鑑みると、コネの有無にこだわらないほうが無難ではないでしょうか。就活中の方はぜひ、下記のコラムもご参考に!
まとめ
スキルアップを目指してゼミを選ぶときは、ゼミの学習内容だけにとらわれず、どのような力が身につくのかを広い視野で眺めることが大切です。
□ ゼミでの学びでどのような知識を高められるか
□ 授業はどのような形式で行われるのか
□ 課外活動や研修はあるのか
ゼミを考える期間は、一般的にそれほど長く設けられていません。また、ゼミ面接に落選して意図せぬゼミに所属することも考えられます。
そんなときは、転ゼミ(ゼミの移籍)を視野に入れるとよいでしょう。履修登録の度にさまざまなゼミを渡り歩いていた知人曰く、幅広い分野を学べてよかったとのこと。思いのほか、転ゼミに踏み切る学生は少なくありません。「さまざまなスキルを磨きたい」「将来像が変化した」などの悩みがあれば、思い切って転ゼミするのもスキルアップへの道筋になります。
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