本原稿では、スキルマトリックスを紹介するとともに、Web上で公開されているさまざまな業種のスキルマトリックスを紹介しています。
そもそもスキルマトリックスとは企業における取締役会の知識や能力、経験を見える化したものです。英国やドイツ、ICGNのコーポレートガバナンス・コードなどではスキルマトリックスについて言及されています。
経営において誰が、どのようなスキルを持って、どのような活動をするのかはとても大事です。一般的な株主には、経営の実態は、実は見えにくいものです。しかし、スキルがマトリックス化されるとおおよそのことはつかめます。
開示することによってオープンな企業としての信頼性も増します。
コーポレートガバナンス改革とは?
コーポレートガバナンスとはかつては企業統治という意味で使わていましたが、簡単に言えば企業経営を管理監督するための仕組みのことです。企業が一部の取締役や自社だけにの都合のいいように経営をして関係者に迷惑をかけたり、不利益を及ぼしたりしないために社外取締役や社外監査役などを迎え入れて経営を監視します。
コーポレートガバナンス改革に必要な3つの視点
コーポレートガバナンス改革では、企業の付加価値や生産性の向上競争力の強化を行うために柔軟な経営力を持つことが求められます。
それには次の三つの視点が重要だと考えられます。一つ目は社外取締役の活性化です。女性や中途採用者、外国人、若年層などの幹部候補への登用を考えます。これによって経営人材の流動化や多様な人材確保が進み、経営のダイバーシティかが推進されることで社会にも大きく開かれることになります
二つ目は社員視点の人材育成方針や子育て環境の整備です。いわゆる社員とのエンゲージメントの向上を図ることです。社員が働きやすい環境であることを自主的に開示することで社会的企業としての付加価値が向上し魅力が高まります。
三つ目はそうした取り組みやその見える化です。たとえ上記のことができなくても外部に対してしっかりと説明することも重要です。そのためにはコーポレートガバナンス・コードを拡充しなければなりません。
スキルマトリックスとは
コーポレートガバナンス改革で欠かすことができないのが会社の見える化です。スキルマトリックスはそのために利用されます。スキルマトリックスは取締役として経営に参加するために必要なスキルを表にまとめます。取締役ごとに専門分野や知見を示すのです。
例えばスキルマトリックスの項目では企業経営、マーケティング、開発、製造、財務、人事労務、法務、ESG、グローバル、ITなどが挙げられます。役員の人事が各専門分野を網羅するなど偏りがないように企業にとって必要な人材が配置されることが望ましいと考えられます。
これらを一覧にすることができれば、どの役員がどの分野において強みを持っているかが瞬時に把握できます。それだけでなく企業の強みも見て取れます。
役員名 | 企業経営 | 研究開発 | 製造・技術 | 営業 | 財務 | デジタル | 人事・労務 | 法務 | ESG | グローバル |
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スキルマトリックスやコーポレートガバナンス体制例
▶︎JFEホールディングスの取締役・監査役のスキルマトリックス
▶︎丸井グループの役員スキルマトリックス(PDFダウンロード)
▶︎J-POWERのコーポレート・ガバナンス・取締役のスキルマトリックス
▶︎日清食品ホールディングスのコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
スキルマトリックスの表現とは
スキルを一覧で示すとともに顔写真や男女、略歴の補足などで、役員の得意分野などが明示されているケース、また、コーポレートガバナンスの全体像を説明した上で解説しているケースなど、各社それぞれにコミュニケーションを意識した展開がみてとれます。もちろん、WEB上だけでなく、PDFなど、ガバナンスレポートとして配布している企業もかず多く見られます。
ここでリンクしているスキルマトリックスは2021年12月28日現在のものです。
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