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有給休暇の取得率を上げて人材の獲得へ

有給休暇の取得率を上げる具体的方法
休暇取得は仕事の効率化にもつながる
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有給休暇消化には休み方の意識が大事

有給休暇の取得率
資料出所 厚生労働省「就労条件総合調査」、「賃金労働時間制度等総合調査」
調査対象は変更されているので詳細は以下のサイトを参照
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0504.html

上の表は、1984年から2019年の有給休暇の取得率、取得日数、付与日数のグラフです。年次有給休暇の取得日数は、ほぼ横ばいです。働き方改革を社内で推進し、さまざまな施策を打ってきたものの、有給休暇の取得に関してはなかなか増えていないことがわかります。

●有給休暇取得率1位〜50位の企業→東洋経済ONLINE

ワーク・ライフ・バランスに関するトップメッセージをウェブや紙の社内報に掲載しているものの、働き方や休み方に対する意識の変化が感じられない……。

そのような課題がある場合は「働き方」「休み方」への基本的な考え方を変えることが重要です。
本原稿では年次有給休暇の取得率の向上から、有給休暇を使い切る方法とはとして、「休み方」の意識を改善する方法を紹介します。

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有給休暇の取得率向上が人材獲得になる理由

有給休暇の適切な取得を促進することは、優秀な人材の獲得に有効な理由があります。
ワークライフバランスを重視する傾向が高まる中、従業員が心身ともにリフレッシュできる環境は大切な評価ポイントになっています。

有給休暇を取得しやすい企業は、働き方の柔軟性が高く、従業員の健康やプライベートを大切にする姿勢があると好印象を持たれます。

結果として優秀な人材を引きつけやすくなり、社員の定着率の向上にもつながります。さらに、有給取得を奨励する企業風土は、社員一人ひとりの生産性の維持・向上にもプラスの影響があります。

  • ワークライフバランスを重視する人材に好印象
  • 健康とプライベートを大切にする姿勢が評価される
  • 優秀な人材の引き止め力となる
  • 従業員の生産性維持・向上に寄与
  • 柔軟な働き方ができるイメージ
  • 企業の魅力を高め、人材獲得を後押し

総じて、有給休暇を積極的に活用できる環境は、ワークライフバランスに配慮した魅力的な企業風土を体現し、優秀な人材を惹きつけるための重要な要素といえます。

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年次有給休暇を見える化する

有給休暇を見える化

年次有給休暇の取得促進を図るため、「見える化」の取り組みが効果的です。個人の年次有給残日数を社内ポータルやツールで一覧化し、上長や人事部門が状況を把握できるようにします。

加えて、部署ごとの取得率を開示し、低い部署に対して改善を促します。さらに、社内報やイントラネットで好事例を紹介し、休暇取得をポジティブに評価する雰囲気づくりも重要です。

こうした見える化により、経営陣から現場まで有給取得の重要性を共有でき、計画的な取得が進むでしょう。結果的に従業員のリフレッシュとワークライフバランスの改善が図れ、生産性の向上と優秀な人材の確保・定着にもつながります。

年次有給休暇の取得促進を社外にも伝える

年次有給休暇の取得を促進することは、自社内のみならず、取引先との間でも重要です。年次有給休暇について、暇取引先に派遣されている社員は取得しづらい傾向にあります。取引先の社員が休みをあまり取得していない場合、休みを取りたいと言いにくいからです。

この課題を改善するには、年次有給休暇の取得を促進するように、取引先(派遣先)に働きかける必要があります。

取引先との関係見直しも手

年次有給休暇取得の促進を目的に、取引先との関係性を見直すということです。一定期間ごとに年次有給休暇の取得計画を作成し、その計画を基に、取引先に対して自社の年次有給休暇取得促進に向けた取り組みを説明し、配慮と理解を求めましょう。

ある情報通信業者は、顧客に原因があって社員が年次有給休暇を取得できていない場合、部長クラスから顧客に協力を依頼するという手段を取っています。また、受託費用の精算では、年次有給休暇取得の目標値に応じた時間数から人件費単価を計算し、価格交渉時に顧客の理解を得る努力をしています。

年次有給休暇取得を推進する方法


・年次有給休暇取得促進のための情報を社員に提供する。
・各自の年次有給休暇の残日数について、定期的に社員に通知する。給与明細への記載や、メールによる個別配信の実施など。特に、年次有給休暇が期限により失効する一定期間前には必ず通知する。
・年次有給休暇の取得と個人の評価は関係がないことを社員に説明し、人事評価マニュアル等の規定にも明記しておく。

はがきサイズの「休暇取得管理表」カードを全社員に配布している企業もあります。カードには、年次有給休暇をはじめ各種休暇を自己管理する表が記載されていて、社員自身が休暇の取得予定日を書き込める形になっています。そのように「見える化」することで、社員各自が休暇を取得しやすい状況をつくっているのです。

有給休暇の取得率を上げる基本的な取り組み

有給休暇の取得率を上げることは、従業員の健康維持とワークライフバランスの改善につながり、優秀な人材を引きつけ、定着させるのに有効な施策となります。基本的な取り組みは次のような事柄です。

  1. 上層部のコミットメント
    経営陣が有給取得の重要性を認識し、メッセージを発信することで、社内の意識改革を促します。
  2. 計画的な取得促進
    年度初めに有給取得計画を立ててもらい、上長が適切に管理することで、実際の取得を後押しします。
  3. 賃金と切り離す
    有給を敬遠する理由の一つが「収入減」にあるため、有給取得時も通常給与を支給するようにします。
  4. 部分取得の推奨
    長期の連続休暇が難しい場合は、1〜2日程度の部分取得を推奨し、リフレッシュの機会をつくります。
  5. 交代勤務制の導入
    業務に支障がでる職場では、交代勤務制を導入して有給取得をサポートします。
  6. ポジティブな周知
    有給は「権利」であり、適切に取得することで生産性が向上することを、わかりやすく周知します。

こうした取り組みを通じて、有給休暇を活用しやすい環境をつくることが、従業員の定着と優秀な人材確保に大きく貢献するでしょう。

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ワーケーション型研修で有給休暇の意識変革

ワーケーション型研修

年次有給休暇の取得促進には、休暇の意識改革を行うことが必須です。意識改革を迅速かつ確実に遂行できるように、研修を実施しましょう。
この研修でテーマとなるのは2つです。
「管理職本人の休み方」と「部下の働き方・休み方のマネジメント」です。

「管理職本人の休み方」の研修では、自身のワーク・ライフ・バランスや業務の効率化など働き方・休み方の改善による効果並びに意義について、講座や座学で考えます。
「部下の働き方・休み方のマネジメント」では、部下の労働時間の管理は管理職の基本業務の要素であることの認識を深め、定時退社を前提とした仕事の割り振りをはじめとしたマネジメント能力の向上を目指します。

これらの理解を深めたあとは、職場や部署ごとにどのような取り組みが可能なのかを、グループワークで討議。その内容を策定する実習型の研修を行い、年次有給休暇を取得しやすい環境づくりの足掛かりとします。

今後の働き方改革のさらなる推進を見すえている場合は、講座や座学などe-ラーニングで可能なものはワーケーション型研修で実施することもよいアイデアです。
ワーケーションとはワーク(労働)とバケーション(休暇)からなる造語で、休暇を取りながらテレワークする働き方のこと。アフターコロナの新しい日常の形として、政府が提唱しています。
この新しい働き方・休み方を先取りして、試してみるのはいかがでしょうか。

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年次有給休暇取得を人事評価に加える

人事評価に加える

管理職層の意識改革は、人事評価に年次有給休暇取得を組み込むこととセットで行うことで有効性を増します。以下は、実際の企業がどのように人事評価に取り組んでいるのかという(働き方・休み方改善指標)です。

・管理職の評価指標に部下の年次有給休暇取得率等を盛り込み、実際の取得状況の推移と比較し、人事考課に反映させる。

・部署単位で年次有給休暇取得率等を算出し、賞与時等の評価に反映させる。

・これまでもリーダー職に対しその部下の所定労働時間内の業務遂行を人事評価項目としていたが、職員自身の自己評価項目にも加える。

・管理職のマネジメントに対して、部下が評価する仕組みを検討する。(回答者が特定されないよう配慮する)

会社全体で取り組むべき課題であることを示すために、社員の年次有給取得率の平均値などを組織評価の指標に盛り込むことも有効でしょう。
なお、人事評価に加える際は、年次有給休暇の取得が低評価の要因にならないことを説明するほか、人事評価マニュアルなどの規定にもしっかりと明記し、社員の不安を取り除くことも不可欠です。

年次有給休暇の取得率向上を目指し、メモリアル休暇制度を導入した企業事例もあります。
メモリアル休暇制度とは、記念日や誕生日などに年次有給休暇の取得を促す制度です。特に誕生日はどの社員にも平等に訪れる(すべての社員に権利を提供しやすい)ため、他の休暇制度に比べて導入しやすいという特徴があります。誕生日は繁忙期に重なる場合は前後の月に振替を行うなどルールを決めておけば、業務への影響も最小限に抑えられます。

年休取得管理の徹底も、年次有給休暇の取得促進につながります。全社的な年間計画を立てることで、休暇申請時の精神的なハードルが下がるからです。年休申請書の返却時に残日数を記載するなどして年休の残日数を見える化することも、取得促進の意識を高めるでしょう。

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休暇取得の促進には冊子やポスターで改めて啓蒙する

休暇取得の促進

ワーク・ライフ・バランスについて、トップメッセージをウェブや紙ベースでの社内報で掲載しているものの、働き方や休み方の意識改善につながっていない。その問題の原因として、トップメッセージがきちんと社員に届いていない可能性があります。
イントラネット(組織内におけるプライベートなネットワーク)では、日々さまざまな情報が送受信されています。その中で社員が優先するのは、「必ず確認が必要な情報」です。社内報は任意確認の情報ですから、その他の情報に埋もれてしまいがちなのです。時間単位年休や年次有給休暇の計画的付与制度など、年次有給休暇についての基本的な事柄を認知していない社員もいるかもしれません。

打開策として、例えば「働き方・休み方改善推進ポスター」の掲示や、別冊社内報として冊子にするなど、社員に確実にメッセージが届く方法に変更してみましょう。このときポスターや冊子のデザイン(特に表紙)は堅苦しくせず、人目を引きやすいものにすることがポイントです。

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休暇のとるには定量的な目標をメッセージに掲げる

人は具体的な数字を見せられる方が、より強烈な印象を受けます。
広告チラシでも「大幅値下げ!」より、「90%オフ!」のほうが、「今だけのセール」より「3日間限定セール」のほうが、より消費者の行動を促せます。

これはメッセージでも同様で、定量的な目標を掲げる方が人に伝わりやすくなります。そこでポスターや社内報にも、取得日数など具体的な数値目標を盛り込みましょう。定量的な目標や取組の進捗などについても定期的にトップメッセージを発信することで、社員への意識浸透を図ることができます。

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おわりに

年次有給休暇の取得率を上げることは、働き方改革の最初の一歩であり、最初の難関です。我々日本人には、それだけ「休むことは悪」という先入観が根強いからです。

その改善は簡単ではありません。しかし、ここをクリアすれば、働き方の意識は社内で大きく変化したといえるようになります。すぐに効果は出なくても、諦めずに取り組みましょう。

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