はじめに 〜非効率的な習慣を一新するには〜
本記事では店舗や支店など、複数の業務拠点における従来の習慣を見直し、マネジメントの視点から業務の効率化や平準化、再分担化を進める方法を紹介しています。
長年営業を続けていたり、多店舗展開している場合は、それぞれの場所で独自の業務文化が根付き、効率化や平準化、再分担化が浸透しづらい傾向にあります。しかし、時代に即した変革を欠かすことはできません。従業員の理解を得て、非効率な習慣を見直して業務の改善を促進していきましょう。
業務改善には、店舗運営に新しい時間概念を取り入れる
営業時間の見直しや予約制の導入で、無駄な人件費や労働時間を削減しましょう。
営業時間や営業形態を変更する前には、顧客のニーズや時間帯による稼働人数を分析することが重要です。時間や形態の変更が難しければ、要員計画を見直してみましょう。来店人数や忙しさに対し、必要以上の人手がある場合は、一日の人員を削減するのも手段の1つです。
なお、営業時間や営業形態を変えるときは、顧客を困惑させないためにも、チラシやDM、メールなどで丁寧に周知することが大切です。
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業務の効率化には、拡大業務に専念する従業員をおく
雑務に費やす時間と労力を削減することができれば、重要な仕事に集中しやすくなります。専門性の高い職種が、重要な業務に集中できる環境づくりを進めましょう。業務拡大、顧客との信頼関係強化など、専念できる人材を配置する方法があります。
1. アルバイトやパート、アウトソーシング(外注)
単純作業や専門性の低い業務だけを担う人材を、アルバイトやパート、アウトソーシングなどで採用します。「アルバイトやパートのスキルアップ方法とは?マニュアルとメンター制」の原稿が参考になります。
2. 本部への集中化
事務業務全般を本部で行うことで、各営業所の省力化を図ります。現場の従業員の負担が軽減されるだけでなく、業務のデータを本部が扱うことで、各営業所の現状把握や助言もしやすくなることも期待されます。
専門性の低い業務は多能工化を進めてコストを削減
基本的かつ特別なスキルを要さない業務は、誰もが行えるようにするのが大事です。
専門職の多い会社であれば、部門ごとに業務量や労働時間に激しい差が見られます。専門性の低い業務は部門にとらわれず、業務を平準化してみましょう。
1. スキルをチェックリスト化
職種やポストに関係なく、すべての従業員に必要な技能を明確にしたチェックリストを作成します。月に一度ほど自己チェック日を設け、該当する知識や技術を習得できているかを従業員に振り返ってもらいます。後ほどチェックリストを上長に提出。上長は自身の評価と擦り合わせながら、従業員が実際に達成できているかどうかを確認します。
2. フリーアドレスデスクを導入
本部では、座席を固定しない、フリーアドレスデスクを取り入れます。職種や部門単位ではなく、従業員一人ひとりでの行動が盛んになることで、各々が専門性の低い業務に携わるきっかけづくりになります。また、職種や部門を超えてコミュニケーションを図る機会が増え、業務に対する視野の拡大も期待されます。ただし、機密情報や大量のデータを扱う従業員は席を固定するなど、従業員の特性に合わせて柔軟な対応を心がけましょう。
従業員の生産性向上には業務を分担する制度を取り入れる
1人あたりの負担が大きい職場では、長時間労働につながりやすい傾向があります。このような業務は、責任者が主体となり、複数人に業務を分配する形で進めましょう。
さらに、責任や負荷の軽減には、メンタルヘルスの不調を解消する効果も。従業員それぞれが能力を最大限に発揮し、生産性向上につなげるためにも、業務が1人に偏らないようにしましょう。
1. チーム制を導入
各業務に担当者をつくらないようにしましょう。例えば小売店の場合、とある商品について1人の担当者が仕入れから陳列までを行うのではなく、グループをつくって複数人で連携を取りながら対応するようにします。
2. 短期でのジョブローテーション
ジョブローテーションを行い、他部門・他職種の業務を体験します。ジョブローテーションの目的は、あくまで他部門の業務を理解し、他部門における専門性の低い業務をこなせるようになることです。半年から1年以上の長期ではなく、1週間から1か月程度の短期間でジョブローテーションを取り入れるようにしましょう。ジョブローテーションにより部門を超えた交流が生まれ、互いに応援を求めるハードルが低くなることも期待されます。
業務の効率化を進めるには改善報告書でフォローアップ
改善報告書をもとに、一定期間の経過観察を行います。単に改善報告書を提出してもらうだけでは、業務改善の実効性が確保されないからです。以下の6点を確認して問題がなければ、取り組みをはじめてみましょう。
□ 現状と問題点を正確に分析しているか
□ 具体的な改善方法が挙げられているか
□ 改善対策は分析した原因に対応しているか
□ 改善対策は実現可能か
□ 達成期日が設定されているか、また、無理はないか
□ 改善対策に要する経費や人員は現実的か
達成期日が過ぎたら、取り組みが成果を上げているかを確認します。この際に洗い出したいのが、効果のなかった取り組みです。その原因を改めて分析しても効果が期待されない場合は、対策を練り直し、同様の手順を繰り返します。
役割ごとにリーダーを設ければ、業務の見直しが進む
リーダーは業務過多になりがちな役割です。従業員をリーダー、サブリーダー、メンバーに分類し、リーダー業務を各従業員のレベルに応じて分配します。
リーダー・・・自主的に行動し、従業員を牽引する存在です。店舗の経営や採用活動、クレーム処理など、リーダーでなければ務まらない仕事を優先的に行いましょう。
サブリーダー・・・発生頻度の低い業務も習得しており、状況に応じてリーダーの代わりを務められる従業員にあたります。新人育成や事務処理、開店・閉店準備など、店舗運営の骨組みとなる部分を担当します。
メンバー・・・メンバーにとって最も重要なのは、基本的な業務をこなすことです。手の空いた時間や、開店前・閉店前などは、リーダーやサブリーダーの指示を仰ぎましょう。
人材採用では必要な能力の明確化が業務改善になる
現場で活躍できる人材を雇用するために、大人数の闇雲な採用や、フィーリングでの選考は避けましょう。現場で活躍できる人材をきちんと見極めたほうが、長い目で見ると有益なのです。
短期的な雇用だと能力やスキル、中長期的な雇用だと協調性や積極性も重要になります。短期的な雇用を行う背景には、人手不足や業務過多が考えられます。丁寧な研修が難しければ、経験者などの即戦力を採用します。
中長期的な雇用にはじっくりと人材育成の時間を費やせます。できるだけ長く働いてもらうためにも、「労働条件は一致しているか」「職場の人間関係に馴染めそうか」「業務に適性が見込めるか」に重点を置いて選考します。ステップアップできる仕組みも用意しておけばいいでしょう。
採用時のポイント
□短期・中長期など期間を定める
□必須能力を定める
□目的に合わない能力の人は採用しない
効率的に選考するためにも、新規採用を行う理由に応じて「必須の条件」「あると良い条件」「不要な条件」をあらかじめ定めることは必須です。人柄が良さそうに見えても、雇ってから想定したことができなければ、人件費の損失になりかねません。
本記事のまとめ
なんとなく受け継がれてきた悪しき慣行を見直すには、業務の抜本的な変革が不可欠です。
効率化や平準化、再分担化で従業員が得られるメリットを示すことも大切です。勤務形態や業務の進め方などを見直し、問題点を改善することで「長時間労働が是正される」「1人あたりの仕事量が減る」などと具体的な効果を伝えます。仕事の効率を上げるだけでなく、従業員が無理なく働ける職場づくりを心がけましょう。
●営業形態の見直し(時間など)
●専任職の配置
●多能工化
●業務フォローの仕組み化
●業務の再分担
●業務範囲の見直し
●専門職の採用
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